臭いの自覚

ワキガの人間は、鼻の機能をシャットダウンするような強烈な臭いに気付かないという。だから、私も気付いてないだけだけでもしかしたらワキガかもしれないのだ。ちなみに、会社の先輩で2人、ワキガのような人がいる。1人は疑惑で、もう1人はほぼ確信している。

頭や足の臭いに関しては自分で気付く。汚い話だが、私は風呂に入った後の髪の毛を乾かしたりする一連の行為が面倒なあまり、休みの日には当たり前のように風呂に入らず一日中引きこもっている時がある。でもそんな時、頭と足が臭いと感じる。頭はなんとも言えないムッとした臭いで、足の臭いに関しては割愛する。ちゃんと臭いことを理解しているつもりだ。だから引きこもっているのだ。決して威張ることではないが。

では、口臭はどうだろうか?接客業をしていると、時たま「胃で下水の処理でもしていらっしゃるのかな?」ってくらい吐く息が臭い人がいる。(もし本当に胃で下水の処理をしていらっしゃるのであれば、そのおかげで便利に暮らせていることに感謝しなくてはいけない。)

気のせいかもしれないけど、ドブみたいな口臭する人は比較的顔が近くて、この前Twitterで見た「アナタクチクサイ!」と叫んだ外国人みたいになってしまいそうになるのを必死で堪えている。

ああいう方々は自分の口臭で気持ち悪くなったりしないのだろうか。ワキガと同様に自覚症状がないのだろうか。そうすると、私もひょっとすると人の健康に害を及ぼすレベルで脇や口が臭い可能性もゼロではないのか。

そう思うと、人間持ちつ持たれつで生きてるんだなと実感するし、臭くても黙っていてくれる友人同僚家族には頭が上がらない。日々疑問に思うくだらないことをそのまま言語化すると、私が脇も口も頭も足も臭い最悪な女みたいになってしまったのが納得できないが、今日はそんな身の回りの人たちへの感謝の気持ちを抱きつつ、念入りに歯と脇と頭と足を念入りに洗おうと思う。

彼方へ

‪高校の授業で漢詩を習った時、その詩と教科書の挿絵の美しさにいたく感動したことがある。

当時パスポートも持ってなかった私だが、何の気なしに「中国に行ってみたい」とこぼしたところ、周りは「民度が低い」などと言って、誰も応援してくれなかった。

その時は自分の想像と周囲の持つ中国への印象のギャップに少しだけ動揺したが、特に取り立てることもなく、自然と中国についての話をすることはなくなった。‬

‪その翌年、一部の中国人による過激な反日暴動が連日メディアに取り上げられた。

私は馬鹿だったので、自分が一年前に中国に行きたいと思っていたことすら忘れて、ちょっとした反中感情まで生まれた。なんなら大学で中国語を専攻しようと受験勉強を頑張っていたかつての同級生を内心嘲笑っており、至極最低の人間だった。ネット右翼同然の18歳なんて、本当に可愛げがない。本当に申し訳ないし恥ずかしい。

あれから5年以上月日が経った今、紆余曲折あってインバウンド旅客の対応に追われる日々を送っている。

初めは日本語も英語もわからないからといって、初対面で当たり前のように中国語で話しかけてくる人達に戸惑ったがらたくさんの方々との関わり合いの中で、中国人の方々の律儀で大らかな人となりに惹かれていく自分に気付いた。

目まぐるしく過ぎる日常の中で、今日突然、初めて漢詩を読んだ時に自分で描いた幻想的で美しい中国のイメージを、本当に突然、ふいにパッと思い出した。そしてそのあまりの美しさに、旅客で賑わう土曜日の朝の空港のチェックインカウンターのあたりを歩いていたにも関わらず、一瞬だけ周囲の音が消えた気がした。大袈裟かもしれないが、本当にそう感じた。

勿論、美しいだけの国なんてないし、政治的や歴史的な隔たりもあるだろう。幻想を抱いて実際の姿に落胆する未来もあるかもしれない。それでも、憧れと希望を持った若い芽を摘むような真似はしないようと強く願うばかりである。

人が外国語を話すのを聞くのが好き


仕事上外国語を話す機会が多い。その度、外国語を話すのは楽しいけどあんまり得意じゃないと感じる。
厳密に言うと、スペイン語イタリア語は結構得意だけど、英語が苦手だ。

スペイン語イタリア語は母音が私たち日本人にとってとても明瞭で、とても親しみやすい。
それに対して英語は、こう、ぬぁーーーっとしてて、さらーーーっとしてて、本当に「外国語!」って感じがする。だから英語が上手な人、もっと言うと、内容云々ではなく、発音が上手な人はかっこいい。

空港で働いていると中国人観光客が言わずもがな多い。 モンゴル人スタッフが中国人の対応になるとまるで声色が変わってしまうのだけれども、そのギャップがとても印象的で好きだ。

私のOJTの先輩(可愛い)は韓国語が得意で、よくヘルプを求められている。韓国語での相槌は「デー」と言うらしく(?)、凄く愛らしくて優しい先輩(可愛い)が「デー、デー、デー」って言ってる姿はまたなんとも素敵で。

さっきまで日本語でにこやかに私と話していた人が、突然外国語のスイッチが入ってペラペラと知らない言葉を話しているのを聞くと、不思議な気持ちになる。

言葉ってなんだろう、コミュニケーションってなんだろう、私は本当に言葉を理解しているのだろうか、理解していると錯覚しているだけなんじゃないか。

そんな思いを馳せながら宇宙を飛んでいると「それでね」って先輩(可愛い)がニコニコしながら話しかけてきて目がさめる。

人が外国語を話すのを聞くのが好きだ。
誰も知らないこの世の神秘に触れた気分になる。