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分かり合えない感情の狭間で

先日、初めて恋人と仲違いをした。理由はくだらないことだった。私が怒って恋人に対して殴る蹴るなどの暴行をすると、彼は喧嘩ばかりしていた血気盛んな青年時代を思い出し楽しくなってしまったらしく、嬉しそうにしていた。それがまた余計に腹が立った。

 

彼はこれまでの家庭環境からか、人間関係に対してある程度な諦めを持ってるみたいだった。私がぷんすか怒る様を見て、「今日は会っていても仕方ない」と感じたらしく、なんと私がトイレで吐いている間に颯爽と帰ってしまったのだ。

 

「私は、もしかすると、とんでもない人と恋に落ちてしまったのかもしれない。」ただ漠然とそう思いながら一人帰る道で、まだ真昼間だと言うのに、人目も憚らずわんわん泣いた。

 

彼から電話が掛かってきた。話がしたい、とのことだった。話がしたいなら何故、帰ったのか。

 

彼の人生では、いつも突然世界が一変するのだ。幼少期での実母の死、離縁、両親の離婚や再婚、幾度の転校、家からの追放。私はなんとなくしか聞いていないため、詳しい事情はわからないし、聞いたところで理解はできないと思う。ただ、これらの出来事は、彼の人生ではごく普通に起こり得る、取るに足らないものであり、そして、私の人生では一度も起こらないであろう事柄である、ということ。

 

彼は突き付けられる運命を受け入れるしかなかった。だから、人との別れに対して非常に淡白な面があった。そこは私には理解できなかった。育ってきた環境が違うからすれ違いは否めない、と歌う歌手もいる。私はその歌の続きを知らない。

 

何に対して腹が立ったのか、どう感じたのか、次からはどうすればいいのか、など電話で話している内に、大好きな彼の優しい声色に癒され、不快な気持ちがなくなっている自分に気付いた。

 

 

「それで、体調はどうなんよ。味の濃いもの食べてしんどいんでしょ。」

 

 

無意識に彼を労わる言葉を掛けていた。悔しいけれど、やっぱり愛してるから彼のことが心配になるし、幸せでいて欲しいと思う。そして、その幸せの理由になりたいとも思う。

 

 

分かり合えない感情の狭間で、どうしようもない虚しさに飲み込まれそうになった。ただ、冷静になって考えてみれば、分かり合えないことの何が悪いと言うんだろう。

 

 答えは出ていない。それでいいと思う。ただ、徒然なるままに綴っただけ。