ナポリタンばかり食べている

最近ナポリタンがブームで、コンビニで買ったり市販のソースを使ったりはたまた自分で作ってみたり。誇張なしで1週間の内、5回くらいは食べている。お世辞にも身体に良いとは言えないし、濃くてチープな味付けだが、ここ数ヶ月は働き詰めで身体が常にエネルギーを欲しているので、こういうジャンキーな味が妙に満足度が高くて美味しく感じるもの。一口一口が五臓六腑に沁み渡り、「よし、この後も頑張ろう!」という気持ちにさえなる。

 

他にもジャンクフードが数多くある中、何故ナポリタンなのか?実は大きなきっかけがある。およそ2週間ほど前のことだった。

 

その日は入塾説明会や体験授業がたくさんあり、食事もろくに取れないままその運営に明け暮れていた。ようやく終わりが見えてきた頃、教室から異様なほど良い香りがしてきた。

 

話は逸れるが、昼食の時間帯に教室の前を通ると、生徒たちの"家庭のお弁当"の香りがする。それはどこか懐かしく、そして私のために毎日米一合も入った野球部の男と同じサイズのお弁当を作ってくれた母への郷愁に駆られることもあるくらいだ。味や香りというものは非常に言語化しづらいが、この"学生が親の手作りのお弁当を持ち寄って食べる時の香り"というのは独特なのだ。

 

それはさておき、私が教室の前を通ったのは夕方18時以降。ルールとして、お昼休みは教室で食事を摂っても構わないが、それ意外の時間帯は食事用のフリースペースでのみ食事が許されている。

 

「うわぁ、いい匂い。お腹すいてくるなぁ。そういえば休憩とれてないなぁ…」

 

とぼんやり廊下を歩いていたが「いや待ておかしいやろ!?この時間帯になんでこんないい匂いすんねん!」とセルフツッコミしながら踵を返すと、塾生の女の子が堂々とファミマのナポリタンを食べていた。

 

その子は高一の頃から塾に通ってくれているので一方的に知っているが、賢くて真面目な優等生タイプ。そんな彼女がルールに反して思いっきりナポリタンを食べていた。思わずちょっと笑ってしまった。嘘、結構笑ってしまった。

 

その子に声を掛けると先述のルールを知らなかったようなので改めて説明したが、食事中に移動させるのも気の毒なので今回だけはこのまま教室で食べていてもいいよと許可をした。

 

彼女が食事を終え、授業のため教室を移動した後でも、あまりに強烈なナポリタンの臭いが室内に蔓延しており、そこから私の中でナポリタンへの熱い思いが、きっとその場でナポリタンを食べていた彼女以上に芽生え、冒頭の通り秋5ペースで食べている。

 

このエピソードは(そこで働く同僚たちにしか伝わりづらいと思うが)中々シュールで面白い話だったので、何人かに共有した。するとこぞって全員が「その子、ルール知らんかったんやねぇ、そらしゃあないわ」といった反応をくれた。

 

昨年度の1年間は正直かなり仕事がしんどくて、もう辞めてしまおうかと本気で思っていたくらいだが、多少の過ちに対して寛容な職場の人々に救われている。

 

私は"人に迷惑をかけてはいえない"という考えにがんじがらめになるあまり、人の過ちを許せなくなり自分にも人にも厳しくなって苦しんだ経験がある。だからこそ、こうして広い心で受け入れてくれる現職の人の優しさにいたく感動することが多々ある。そんな方々に「本当にお優しいですね」とおっしゃっていただけることもあり、少しは成長したのかなぁと思ったり。

 

大袈裟かもしれないが、塾生のナポリタン事件で"人としての自分がどう在りたいか"の軸を再確認できたので彼女には感謝したい。